現代は電子機器、メディアの発達により、紙を主とする媒体よりも
むしろインターネットなどを通した情報の取得が拡大しています。
若者の本離れが盛んに言われるようになったのも近年の特徴です。
しかし、書物には電子メディアによる情報が
どう足掻いても敵わないところがあります。
本を手に取った時のしっかりとした重み、
紙やインクの香り、手触り、表紙や装丁を見る楽しみ、
(あまり大きな本でなければ)どこにでも持っていける手軽さ、
ページをめくっていく時のわくわくした喜び、
本を所有する楽しみなど、バーチャルリアリティーが
いくら発達しても現物には遠く及ばない、
という世界がここにあります。
図書館法によれば図書館とは
「図書、記録その他、必要な資料を収集し、整理し、
保存して一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に
資することを目的とする施設」と定義されています。
図書館の歴史は紀元前7世紀ほどに遡って知られており、
粘土板、羊皮紙、パピルス、紙の書物をはじめとする様々な記録、
情報を蓄える施設として大切にされてきました。
単に書物を集めるだけではなく、文化を保存し継承していく
記憶装置として文明を支える機能を果たしてきたのです。
大学の図書館は教養、教育、研究、文化的催し等、様々な面で活用されています。
勿論、最新機器、電子メディアの利用も充分に可能です。
しかし、インターネット等の情報を拾い読みしてレポートを書いても、
知識として頭に残るとは限りません。
実体験としての重みがないからです。
図書館利用者の皆さんには本との触れ合いを通して多彩な世界を疑似体験し、
時空を越えた人々の思想や心情に触れ、
五感を総動員して豊かな精神世界を心の中に作ってほしいと願っています。
図書館には人間が築き上げてきた
大切な文化の心髄が保存されていて、皆さんの利用を待っています。
中部学院大学附属図書館長 大森 正英